2010年04月18日
ボス猿伝 第一話 『旅立ち』

その巨大猿群の中に漢(おとこ)の中の漢と呼ばれる猿がいた。
その漢の名はジュピター。
彼は常に緊張して群れの中心にあり、弛緩というものがなかった。
1000匹を超える猿達を統率し、首長の地位を守り続けていた。
彼の事を『王の中の王』と証する人もいる。
彼がいなかったら、豊の国の山の繁栄は無かったと言われています。
そんなジュピターも1961年1月16日、天寿を全うしこの世を去ってしまいました。
そして、山ではまた新たな伝説が始まろうとしていたのです。。。
199X年。
ジュピター時代から約数十年の時間が流れ、時代は大きく変わり、山ではA群、B群、C群と3つの群れに分かれていました。
A群では仲間思いのホープ、B群では片腕のドラゴン、C群ではメス頭の息子バートンがそれぞれの群れを仕切っていました。
猿の世界では、オス猿は大人になると生まれた群れを離れ、メス猿は生まれた群れで生涯を終えると言われています。
ホープ率いるA群の中でも、今また、生まれ育った群れを離れようとしている一匹のオス猿がいたのです。
彼の名はジャック。
A群で生まれたジャックでしたが、不幸なことに。。。いや彼自身がどう思っているかわからないが、彼は父親を知りませんでした。
ジャックが生まれた時には父親はすでに他界し、この世にはいなかったそうです。
ジャックは父親の名前すら知らずに育てられました。
優しく、そして時には厳しい、母親マリア。
ジャックはそんなマリアからたくさんの愛を受けて女でひとつで育てられたのです。
幼少時代から、マリアからのたくさんの愛とたくさんの仲間達との友情の中で育ってきたジャック。
そんなジャックもいつしか立派な青年猿に育っていたのです。
そして例外なく群れを離れる時はきたのです。
ジャック 『母さん、今までありがとう。俺、一匹前の立派な猿になるよ。』
マリア 『ジャック、お前には本当に寂しい思いをさせてしまったね。ごめんよ。』
ジャック 『何、言ってるんだい母さん、俺は寂しくなんかなかったよ!母さんの子供で本当に幸せだよ。』
マリア 『。。。(涙)』
ホープ 『ジャック!達者でな!』
ジャック 『ボス!俺、南の方行ってみるよ。南の方は暖かくて、すごしやすいらしいんだ!』
ジャック 『そして、そこで新しい群れを作るんだ!』
ホープ 『ジャック、きっとお前ならできるよ!』
マリア 『元気で頑張るんだよ。体には気をつけるんだよ。』
ジャック 『。。。(涙)』
旅立つ者と残る者。
互いにいろんな思いを胸に、ジャックは豊の国の山のA群のみんなと別れ、たった一匹で旅立っていきました。
第一話 『旅立ち』 完
※この物語はフィクションであり、登場する猿や人は架空のものであります。
どこかの山の猿の世界との類似点があったりしますが、その山とは一切関係なく、ア南が勝手に作り上げた物語です。
Posted by d0_0b_anan at 23:56
│ボス猿伝